借金返済に向けて
借金返済に向けて、日夜バイトに勤しむと見せかけて、実は逃走資金をかき集める今日この頃。月給20万円に一切手をつけず、全て借金返済に放り込んだとしても、完済まで軽く5年以上かかるんですよ?時給750円のバイトで、今年中にきちんと返済し切れるはずがありません。って言うか、利息分だけでも不可能です。この借金を返済するためには、それこそ一発逆転的な手が必要です。株で当てるとか、宝くじとか……。でも、インターネットの株取引の知識なんて、ありません。あればもうすでに稼いでいます。そして宝くじですが、あまりに堅実性に欠けます。よって当然却下。って言うか、アレです。一発逆転的な手がそこら辺に落ちていれば、誰も借金返済に悩みません。今のところ、生活に支障はありません。生活費が完全に底を尽いたわけではありませんし、怖い風体のお兄様方が、家の周囲を徘徊し出したとか、あるいは押し入ってきたとかも、まだありません。でも借金返済は完了はしていません。スプレーで家の壁に『借金返済はまだかっ!?』とか書かれ始めたら、末期なのでしょうか?何にしろ、今は偽りの平穏です。借金をしている以上、きっといつか破綻します。あっさりと。どうしたものでしょうか? 我が家の借金返済に対して、何かイイ手はないでしょうか? 悩むものの、有効打に行き当たりません。父じゃありませんが、借金返済に悩みすぎても仕方ないですね。
なんて考えていたら、どこかの馬鹿がやってくれました。自身でその考えに至ったのか、それとも僕の呟きを聞いて決意したのか。父が借金返済に対し、一発逆転に打って出ました。ギャンブルです。競馬です。大穴狙いです。無論、惨敗です。「そのメタボリックな腹の中にある内臓、売ってきて下さい」僕が純粋な殺意を覚えたのは、生れて初めてのことでした。いえ、すでに前の借金発言から、無意識下では燻っていたような気もしますが。「辛辣だな。何、ちゃんと考えてある。借金をしたのは、そもそも私自身なのだから」「借金返済にも期限があるしな」「ホントですか?本当に真面目に借金返済を考えてますか?」欠片も信じていませんでしたが、僕は一応聞き返しました。「ああ。今ある資金の半分は宝くじに当てたからな。まだ夢は費えちゃいないぞ!借金返済もあるしな、さすがに全額を賭けに出るほど、父さんも無茶じゃないさ。はっはっはっは!」えっと、その辺の病院に父の生き胆を売り込んだ場合、高値で買ってくれるでしょうか?兄弟に羽交い絞めにされつつ、僕はついつい包丁を探そうとしてしまうのでした。「こらこら、兄弟喧嘩は好くないぞ、お前たち」ほとほと空気読まないよ、この借金親父。「斬らないから、せめて殴らせて! この借金親父を!」「うん、ぼくらもたった今そう思ったよ、兄ちゃん!」「父さんって、こんなに馬鹿だったんだね!ただの借金返済で身を滅ぼしてるギャンブル親父だ」「お、お前ら! 自分たちの父さんに向かってなんて言いようだ!」
「言われるようなことをしたんですよ! アンタはぁー!」「しかし、借金をしたのは生きるためには必要なことでだな?」「そこじゃなーいっ!?」
親……あるいは年上を敬う心。
僕ら兄弟はそれを一時的に棚に上げて、己が拳を振り上げたのでした。
第一次家族大戦、勃発。停戦に至るまでに、およそ1時間37分を要したことを、ここに記す。
借金返済日記5日目:収入……特になし。借金返済の目処は、当然立たず。
特記事項:父、定職につかずギャンブルに興ず。
現在の状況:親子ともども戦闘不能。全治5日の軽傷を負う。
借金返済の終わりが、何故かまた遠のいた今日この頃でした。