借金返済を終えたはず
借金返済の道のりは厳しいけど振る帰れば借金返済で苦しんだ事も良い思い出になるかもしれない。そう借金返済に対して思えたのは長年肩に重く圧し掛かっていた借金を、ボクは今日ようやく無事に返済し終えたからだ。あぁ、実に晴れやかな気分だ。借金と言う名の負い目が消えたと言う事実が、また素晴らしい。ボクは少しばかり深呼吸してみる。今日の天気はあいにくの台風で、空気は実に湿気臭い。洗濯物も乾きにくい、主婦の敵たる天気だ。でも借金返済の事実がある限り、ボクの心は晴れやかな空気でいっぱいだ。雨?別に槍でも構わないよ。例え借金の額が5万円と言う、世間的に見れば微妙な額であっても、学生である自分にはキツい返済だった。自身の小遣いの数パーセントが、コツコツと続けているバイトの賃金の数パーセントが、常に借金返済に充てられていた。しかし、これからは全てボク自身のものだ! 差っ引かれると言う悲しさとは、無縁だ。祝賀会すら、開きたくなる。そんなボクに、高利貸しな姉さん、(つまりボクが借金をした相手だ)はニッコリと笑って、こう持ちかけてきた。「じゃあ、昼御飯は外で食べようよ。父さんたちも出かけてるんだしさ」と。ボクはそれに頷いた。「ボクが出すよ。借金の利息分ってことで」そう言ったのは、ちょっとばかり格好つけたかったからだ。姉さんには、いつもやられっ放しだから。ついでに「ボクは姉さんみたいに、守銭奴じゃないんだ」と言う、意地みたいなものもあったんだと思う。そんなわけで、姉弟仲良く外食に出かけて今に至るわけだ。それなりに美味しい料理を食べ終えたボクは今、固まっている。冷や汗を垂らしつつ、かちんこちんと。えーっと、何故か財布がありません。おかしいです。家を出る前には、ちゃんとあったのに。ボクは上目遣いで、姉さんを見やる。視線を受け止める姉さんの表情は、怪訝そうだった。「どーったの? そろそろ行こうよ。ついでに買い物もしたいし」「いや、その前にさ、何て言うか…………あー……お金、貸してください」「はぁ?」「だからその、借金させてください」「えーっと……どーゆーこと? 返済したばっかで、何故また借金?」素っ頓狂な声を上げる姉さんと言うのは、ちょっと珍しいかもしれなかった。「財布なんだけど、落としたみたいなんだ。今、ポケットに手を突っ込んで気付いたんだけど」「店に入る前に気づきなさいよ。時々思うけど、アンタって本当に私の弟?抜けてるわね」姉さんはふぅっと息を吐き、それから表情を苦笑に変える。「まぁ、いいわ。貸してあげる。ってか、食い逃げなんてゴメンだし」「ありがと。家に帰ったら、すぐ返済するからさ」「もちろんよ。でも、アンタって微妙に運がないのよね……」こちらを不安にさせる姉さんの言葉は、実に残念なことに現実となった。ボクの財布は、見つからなかったのだ。家でも、帰り道でも……。だから、飲食代はまたボクの借金となった。返済日に即借金。字面だけ見ると、ボクはもう、駄目人間です。出来るだけ、日々正しく生きてるつもりですが……神様、ボクが嫌いですか?って言うか、所持金がゼロと化して傷心の弟に、容赦なく借金返済を迫るマイシスター。財布を丸ごと失くしてるし、そもそも前日まで借金状態だったボクに貯金なんてない。つまり、袖はないんだ。半袖どころか、もうノースリーブって感じ?それが分かってるくせに、返済を迫るなんて……姉さんは鬼だと思います。この守銭奴!そんなことを迂闊にもリビングで日記帳に書いてしまい、見事に姉さんにバレて……。利息が独断と一存で大幅に上がったのは、まぁ、別の話。借金返済の道は、長くて辛い。姉さん、心狭すぎです。ホント。